新海誠監督の映画『天気の子』では、ラストの結末に向けて、いくつも散りばめられた伏線が回収されていきます。
最初に帆高と夏美が取材した占い師(野沢雅子)の「晴れ女」と「雨女」の話、『君の名は。』瀧のおばあちゃんの「旦那の初盆を晴れにしたい」という依頼、神主(柴田秀勝)の「天気の巫女」の悲しい運命の話は、陽菜が人柱となって消えることの伏線となっていました。
ラスト、なぜ帆高は空の上の世界へ行き、陽菜を連れ戻せたのか?実は帆高が「雨男」だった可能性について考察してみます。
ラストまでネタバレしていますので、結末を知りたくない方はご注意ください。
目次
【考察】ラスト結末への伏線回収、占い師の雨女の話は帆高が雨男になることを意味?
占い師(声優:野沢雅子)の「晴れ女」と「雨女」の話
映画の序盤、帆高が須賀に拾われ、夏美と初めて「晴れ女」の取材に行くシーン。
野沢雅子演じる占い師が、「晴れ女」と「雨女」の話をします。
これが実は結末への伏線。
あんなモブ適当な声優でも良さそうなものを、
野沢雅子をもってきた時点で、この時点である程度占い師の話を印象に残しておきたかったことがわかります。
「えっ、悟空?」と印象に残った人は多かったでしょうから。
まず「晴れ女」と「雨女」の特徴をおさらいしましょう。
- 稲荷系の自然霊が憑いている。
- 勤勉でビジネスでも成功しやすい。
- 気の弱いところもあるので、リーダーには不向き。
- なぜか美男美女が多い。
- 龍神系の自然霊が憑いている。
- 飲み物をたくさん飲む。龍だけに無意識に水を求める。
- 気が強くて勝負強い。
- 大雑把で適当な性格。
この時点では帆高自身はまだ陽菜にマクドナルドでビッグマックをもらっただけで、名前すら知らないので、「晴れ女=陽菜」と結びつけることはできません。
しかし、こうやって見ると「晴れ女」の特徴は陽菜にドンピシャです。
「それって私だっ!」と言っていた夏美は関係なし(笑)
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『君の名は。』の瀧のじいちゃんは「晴れ男」だった?
この「晴れ女」と「雨女」の概念は、その後も度々作中で登場します。
『君の名は。』の瀧が登場するシーンでも、
立花富美「旦那の初盆くらいは、晴れにしてやりたいと思ってね」
立花瀧「え?・・・ああ、そういえば雨が止んだね。祖父ちゃん晴れ男だったからなあ」
瀧は陽菜の天気の巫女としての能力を知らないので、瀧の言う「晴れ男」は、単純になぜか晴れに恵まれる、ぼんやりとした概念の話ですが・・・。
雲の上の空の世界への伏線
そしてこのシーンの伏線は瀧のおばあちゃんの言葉にもありました。
瀧は迎え盆を手伝うため、おばあちゃんの家を訪れていました。
おがらを燃やして、迎え火をたき、去年母親を亡くした陽菜と凪も、迎え火をまたいでいきます。
お盆に先祖の霊を迎え入れるためにたく野火のこと。
立花富美「あの煙に乗って、あの人は向こう岸から帰ってくるんだよ。お彼岸。空の上は昔から別の世界さ」
陽菜がこの時手をかざしてじっと空を見つめていたのは、既に空の上の世界を知っていたからです。
そして、おそらくはそこにとらわれることも、予感していたのではないかと思います。
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神主(声優:柴田秀勝)の天気の巫女の話
帆高たちが瀧のおばあちゃんの依頼を受けていた時、須賀と夏美は神社の神主に取材に向かっていました。
神主役にはまたしても声優界の重鎮・柴田秀勝の起用で、観客の印象に残る作りです。
神主「天気を治療するのが、天気の巫女の役割だからのぉ」
須賀は「うさんくさ・・・」と言っていますが、実はここで占い師の話とリンク。
占い師も「今は天の気のバランスが崩れてる」と言っていましたよね。
つまり、「治療」が必要な状態だということ。
神主「それでも、天と人とを結ぶ細ぉーい糸がある。それが天気の巫女だ。人の切なる願いを受け止め、空に届けることのできる特別な人間。昔はどの村にもどの国にも、そういう存在がおったのだ」
それこそが、晴れ女。
つまり、陽菜です。
ちなみに夏美と帆高が取材した占い師の話を元にした「晴れ女を追う!異常気象はガイアの意志だ」の企画は既に没になっています。
夏美はまだ知りませんが。
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神隠しにあう=陽菜が人柱となって消える伏線
占い師「自然を左右する行為には、必ず重い代償が伴います」
神主「やはり物事には代償がある。天気の巫女には悲しい運命があってな」
この代償は、陽菜が人柱となって消える伏線です。
難工事完成を祈って神にいけにえとして生きた人を水や土に沈めること。そのいけにえの人。転じて、ある目的のために犠牲になること。その人。
要は、晴れ女=陽菜が犠牲になってこの世から消えることで、狂った天気は元に戻る。
占い師の
占い師「天候系の力はね、使いすぎると神隠しに遭ってしまうって言われているの!ガイアと一体になってしまうのね」
は完全にあたっていましたね。
人柱となったことで、陽菜は地上からは決して見えない雲の上の草原で、世界の一部となってしまったわけですから。
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空の上の世界から帆高が陽菜を連れ戻せた理由
ラスト、帆高がなぜ陽菜を連れ戻せたのか?
そもそも、「天気の巫女」でもない帆高が、なぜ空の上の世界に行けたのか?
「ファンタジーだから」と言ってしまえばそれまでなんですが、
もう少し考察してみると、
実は幾つか筋が通りそうな伏線があったんですよね。
まず瀧のおばあちゃんの話。
立花富美「お盆はね、死んだ人が空から帰ってくる日なんだよ」
この逆をやり、帆高が空へ行ったんじゃないかと。
陽菜が母親の入院中に光に誘われて訪れ、空と繋がってしまった場所。
代々木の廃ビルの上の鳥居には、盆飾りの精霊馬が2体ありました。
竹ひごを刺したキュウリとナスの馬。
故人の霊魂がこの世とあの世を行き来するための乗り物として、と呼ばれるきゅうりやナスで作る動物のこと。
きゅうりは足の速い馬に見立てられ、あの世から早く家に戻ってくるように。
ナスは歩みの遅い牛に見立てられ、この世からあの世に帰るのが少しでも遅くなるように。
また、供物を牛に乗せてあの世へ持ち帰ってもらうとの願いがそれぞれ込められている。
この精霊馬が鍵です。
1体は最初、陽菜が空と繋がる時に使って、
もう1体を、帆高が空へ行くために使ったのだとしたら?
陽菜が消えたのは、陽菜の誕生日の8月22日。
お盆は16日から24日までなので、
この間は、彼岸と繋がれる可能性があるということです。
帆高が精霊馬に乗り、彼岸=空の上の世界へ行って、陽菜を連れ戻したのではないかと。
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帆高は「雨男」だった?
もう一つ、帆高が陽菜を連れ戻せた理由として考えられるのが、帆高が「雨男」だったことです。
占い師の言葉によれば、
占い師「今は天の気のバランスが崩れてるから、晴れ女や雨女が生まれやすいの。いわばガイアのホメオスタシスね」
「晴れ女」「雨女」に対する「晴れ男」「雨男」も生まれているはず。
つまり、帆高は「雨男」だったのではないかと。
最初の占い師の性格診断を見れば、帆高はまさに「雨男」なんですよね~。
帆高に「雨男」としての力があったからこそ、空の世界へといくことができたんじゃないでしょうか。
あくまで勝手な考察ですが・・・。