山崎豊子さん原作の『沈まぬ太陽』が初めてテレビドラマ化されます。
主演は『シティーハンター』で新境地を開いた上川隆也さん。
ライバル役に渡部篤郎さんと、早くも面白くなりそうな予感!
気になる原作のあらすじや主人公のモデルになった人物について調べてみました。
目次
作家・山崎豊子の最高傑作と言われる『沈まぬ太陽』
あらすじ
山崎豊子さんの原作は3編にわたる長編小説となっています。
1.アフリカ篇
航空会社、国民航空の社員で、労働組合委員長の恩地元(おんちはじめ)は、
死亡事故が起きるほど劣悪な労働環境の改善を目指して経営陣と激しく対立。
結果、海外の僻地へ左遷されてしまう。
一方、同志で副委員長だった行天四郎(ぎょうてんしろう)は、恩地と袂を別ち、出世街道を歩んでいく。2.御巣鷹山篇
10年の左遷に耐え、日本に帰国した恩地。
しかしさらに10年の間、東京本社での閑職に追いやられてしまう。
そんな中、御巣鷹山で「国航ジャンボ機墜落事故」が発生、恩地は救援隊・遺族係へ回されることに・・・。3.会長室篇
御巣鷹山墜落事故から4ヶ月後、国民航空は国見正之を国民航空会長に据えた新体制をスタートさせる。
遺族係として大阪に赴任していた恩地は東京に呼び戻され、国見が新設した「会長室」の部長に抜擢される。
改革に奔走する国見と恩地、そして次期社長の座を狙う行天。
国民航空の腐敗体質の温床となった存在、その背後の黒幕とは・・・。
ドラマではアフリカ篇が全8話、御巣鷹山篇、会長室篇が全12話の2部構成で描かれる予定です。
社会派作品というと、「難しそう」「堅い」というイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
特に、山崎さんの作品は情報量が多いのでなおさら。
誤解をおそれずにざっくりと言ってしまえば、描かれるのは
対照的な価値観を持つ二人の男の対立と葛藤
です。
用語や設定が難しくても、描かれるのはそこに生きる人々。
入り口は難しく感じるかもしれませんが、実際に見てみると用語の難しさはそんなに気にならないと思います!
主要登場人物
恩地元
・実直で何事にも筋を通す性格。強い信念の持ち主。
・国民航空労働組合の委員長として、職場環境の改善に積極的に取り組む。
・その結果会社に目をつけられ、左遷。ながらく窓際へおいやられる。行天四郎
・かつては労働組合において恩地の盟友だったが、後に袂を分かつ。
・出世のためなら手段を選ばず、国民航空の役員にまで上り詰める。
う~ん、見事に対照的な二人ですね・・・。
“組織”を変えるという同じ目的を持ちながらも、袂を分かった二人。
対照的だからこそ、時に憎み合い、時に惹かれ合うのかもしれません。
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ドラマの放送日時は?キャストは?
放送予定
『沈まぬ太陽』はWOWOW開局25周年記念作品として
2016年春、WOWOWの「連続ドラマW」枠でドラマ化予定です。
全20話の2部構成。
WOWOWの「連続ドラマW」は話数が短いのが特徴でした。
だいたい全4~7回、長くても2008年の『パンドラ』(三上博史、柳葉敏郎共演)の8話。
それが今回の『沈まぬ太陽』は全20話!!
民放ドラマが最近長くて10~11話なので、2クール分のボリューム!!
これはかなり期待ができそうです!
山崎豊子さんの小説が、映像化が難しいと言われる理由の一つが、
ボリュームです。
原作の長さを考えると、連続ドラマの枠ではとても全てのエピソードを描ききれないんですね。
今回は2クール分あるので時間はたっぷりあります。
そしてもう一つ。
海外での撮影が必要になるということ。
『沈まぬ太陽』でも主人公恩地は僻地を左遷されます。
当然、この場面なくしては恩地の長い不遇時代は語れません。
その点、今回はアフリカや中東での海外ロケも実施されるようです!
どんな映像が見られるのか、楽しみですね!
WOWOWの「連続ドラマW」でのドラマ化の意義
民放でないのが少し残念ですが、結果的にWOWOWで良かったんじゃないかなと思います。
実在の会社をモデルにしていることもあって、地上波だと放送が難しかったでしょう。
それに、WOWOWの「連続ドラマW」は
社会派作品を描くのが非常に上手い
からです。
特に「対照的な二人のキャラクター」を描くのが得意な印象です。
管理人が好きだったのは、吉岡秀隆さんと三浦友和さんが共演した『トクソウ』。
捜査機関「特捜検察」を描いた社会派サスペンスです。
引用元:amazon.co.jp
独自の捜査と信念の下、正義を貫いていく特捜検事を吉岡秀隆さん、
圧倒的なカリスマ性と統率力で特捜部の象徴として君臨する副部長を三浦友和さんが演じ、
この二人の対立をメインに、物語は進んでいきます。
社会派ドラマの魅力は、組織という、個人ではどうにもならない大きなものと戦う人たちじゃないかな~と思います。
吉岡さんは一見弱々しそうなんだけど、自分の信念は誰に何と言われようと絶対に負けない。
対して三浦さんは副部長という立場から、特捜部を背負って立っている自負があり、特捜部を守ろうとする気持ちも強い。
正義を貫こうとする主人公を、「綺麗事言うな!!」と罵倒する。
ありがちなんですが、ハマるんです(笑)
上司と部下の対立って。
現実社会でもそうだから、主人公に自然と共感してしまうんですね。
くそったれな上司に何とかして一泡吹かせたいと、みんな心のどこかで思っているはず・・・。
一方で絶対的な上司にも惹かれるんですよね。
強くてぶれない。
大義の実現のためには、他人を踏み潰すことを屁とも思わない。
ある意味、清々しいです。
あくまでドラマの中だけですが・・・!
最近記憶に新しいのは、映画化もされた『MOZU』でしょうか。
こちらも西島秀俊さんと香川照之さんの対照的な二人のキャラが印象的でした。
引用元:amazon.co.jp
今回の『沈まぬ太陽』も、
“組織”に逆らい、左遷され続けた男・恩地 と、
“組織”に従い、出世し続けた男・行天
という対照的な二人が描かれます。
正義の定義は立ち位置によって変わるもの。
必ずしも絶対的な正義など存在せず、それぞれが己の信じるもののために戦う。
見どころはこの二人の対立を、役者さんがどう演じるかですね。
キャスト
・恩地元・・・上川隆也
・行天四郎・・・渡部篤郎
上川さんも渡部さんも、クールで硬派なイメージなので社会派ドラマはぴったりですね。
特に渡部さんは、悩めるヒール役をやらせて右に出るものはいないでしょう・・・!
『銭の戦争』 で敵なんだか味方なんだかわからない、
最後の最後まで食えない、
でも憎めない赤松大介役ははまり役でした。
うさんくさそうな真っ赤なマフラーがこんなに似合う人はいないと思います(笑)
2009年の映画版との違いは?
『沈まぬ太陽』は2009年に映画化されています。
このCMはかなり頻繁に流れていたので、覚えている方も多いのではないでしょうか。
映画と今回のドラマの一番の違いは尺の長さ。
映画も202分という、かなりの長編の部類ですが、やはり原作のボリュームを考えると短いと言わざるを得ません。
それに対して今回のドラマは連続ドラマW過去最長となる全20話構成。
映画版では触れられなかったエピソードも、余すことなく描き切ってくれることでしょう。
映画版キャスト
・恩地元・・・渡辺謙
・行天四郎・・・三浦友和・恩地りつ子(妻)・・・鈴木京香
・恩地将江(母)・・・草笛光子
・恩地克己(長男)・・・柏原崇
・恩地純子(長女)・・・戸田恵梨香
その他、
・国見正之・・・石坂浩二
・事故後の国民航空会長・・・香川照之、
・労組書記長・・・大杉漣、
・カラチ支店長・・・西村雅彦
・国航123便機長・・・小日向文世
とそうそうたる俳優さんが出演されています。
しかもなんと!
今回ドラマで主演する上川隆也さんが
東京地検・特捜部の検事役で出演されています!!
これは驚きですね・・・!!
この時から見えない縁で上川さんと恩地が繋がり始めていたのかもしれません。
三浦友和さんはその温和な風貌に似合わず、
『トクソウ』でもそうでしたが、出世の鬼と化す激しい役を演じておられますね。
そこで思い出すのが、『踊る大捜査線』の有名な和久さん(いかりや長介)のセリフ、
「正しいことをしたければ偉くなれ」
これはある意味真理だと思います。
組織を変えようとするならば、ある程度の立場や役職は絶対的に必要だからです。
だから変えようと必死になればなるほど、出世や権力を追い求めていくのもわかる気がするんですね。
ただ、そのために何を犠牲にしても構わないのかというと、また難しい問題ですが・・・。
『沈まぬ太陽』のモデルは?
山崎作品にはモデルとなる実在の人物がいることが少なくありません。
『沈まぬ太陽』でも、作中の企業、「国民航空」は「日本航空」、
主人公・恩地元は元日本航空の反会社側組合の労働組合委員長である
小倉 寛太郎(おぐら ひろたろう)さん
をモデルとしています。
小倉 寛太郎
・東京大学法学部卒業後、日本航空へ入社。
・日本航空労働組合委員長時代の1960年代前半に経営陣と厳しく対決。その後の人事異動で、約10年間の海外(カラチ、テヘラン、ナイロビ)での勤務を強いられる。
・1970年代前半に、国内勤務。
・1985年の日本航空123便墜落事故後、会長室部長に抜擢。会長・伊藤淳二率いる新体制の下、社内改革に力を注ぐ。その後再びアフリカへ。
・定年退職後は、僻地勤務が縁でアフリカ研究家、動物写真家、随筆家として活躍。
ノンフィクション形式にしなかったのはなぜか?
山崎豊子さんは徹底的に取材をし、膨大な資料を集めることで有名でした。
アフリカやシベリア、いわゆる”秘境”と言われるところまで、取材で行っています。
その徹底した取材に基づき、生み出されたのが『白い巨塔』であり、今回ドラマ化される『沈まぬ太陽』です。
ではなぜ山崎さんは小倉寛太郎さんのノンフィクション作品としてではなく、
架空の恩地元の物語として『沈まぬ太陽』を描いたのか?
これはあくまで管理人個人の推測に過ぎませんが、
ある人の人生を、「こういう人がいました」と紹介するのではなく、
モデルを通じて、「自分の理想とする人物像」を描きたかったのではないでしょうか。
山崎作品に共通する、「節を曲げない、矜持をもつ」主人公。
現実の人間は誰しもそんなに強くはなれない。
正論を吐き、きれいごとを通しつづけることなんてできない。
だけど、「そうありたい」と誰もが願う。
小説はあくまでフィクションです。
しかしフィクションだからこそ、描ける人物があり、読者はそういう主人公に勇気づけられ、時に救われる。
それが山崎作品が長年に渡り読者に支持されている理由ではないでしょうか。