土屋太鳳&芳根京子主演の映画『累(かさね)』の原作である松浦だるまの漫画ネタバレあらすじと感想についてまとめています。
醜いがゆえに誰にも愛されなかった少女・累は、ある日、母親の形見の口紅に、人の顔を奪う力があることを知る。同じく口紅で人の顔を奪い、女優として生きていた母親・淵透世の後を追うように、絶世の美少女・丹沢ニナの顔を奪い、演劇の舞台に立つ累。累とニナ、そして野菊の衝撃のラスト結末とは。
口紅の秘密や、いざなの過去、朱磐事件、羽生田の気になる疑問についても解説&考察していきます。
ラストまでネタバレしていますので、結末を知りたくない方はご注意ください。
目次
登場人物&俳優キャスト
2018年日本映画
上映時間112分
監督:佐藤祐市
原作漫画:松浦だるま「累」
■ 淵累(芳根京子)
自分の容姿に強いコンプレックスを持つ女。伝説の女優を母に持ち、天才的な演技力を持つ。
■ 丹沢ニナ(土屋太鳳)
絶世の”美”を持つ女。ある理由から舞台女優として芽が出ず、累と秘密の契約を交わす。
■ 淵透世(檀れい)
絶世の美貌と抜群の演技力を兼ね備えた伝説の大女優であり、累の母。故人。
■ 羽生田釿互(浅野忠信)
累の母・透世に世話になっていたという謎多き男。口紅の力を知る唯一の人物で、累とニナを引き合わせる。
■ 烏合零太(横山裕)
新進気鋭の舞台演出家。ニナと累が共に想いを寄せる人物。
■ 淵峰世(筒井真理子)
累の叔母。透世亡き後、遺産目的で累を引き取るが、醜い累を疎んじている。
■ 丹沢紡美(生田智子)
ニナの母親。娘の女優業を陰ながら応援している。
■ 富士原佳雄(村井國夫)
世界的に有名な演出家。淵透世や羽生田とは旧知の仲。
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『累』簡単なあらすじ
幼い頃より自分の醜い容姿に劣等感を抱いてきた女・累。
今は亡き伝説の女優・淵透世を母に持ち、母親譲りの天才的な演技力を持ちながらも、母とは似ても似つかない容姿に周囲からも孤立して生きてきた。
そんな彼女に、母が唯一残した一本の口紅。それはキスしたか相手の<顔>を奪い取ることができる不思議な力を秘めていた。
ある日、累の前に母を知る一人の男・元舞台演出家の羽生田が現れる。
累は羽生田の紹介で、圧倒的な”美”を持つ女・ニナと出会う。
ニナはその美しい容姿に恵まれながらも、ある秘密を抱え、舞台女優として花開かずにいた。
母親譲りの天才的な演技力を持つ累と、恵まれた美しさを持つニナ。
運命に導かれるように出会い、美貌と才能というお互いの欲望が一致した二人は、口紅の力を使って顔を入れ替える決断をする。
累の演技力とニナの美しさ。どちらも兼ね備えた完璧な女優・丹沢ニナは一躍脚光を浴び始め、二人の欲求は満たされていく。しかし、累とニナ、二人がともに恋に落ちた新進気鋭の演出家・烏合手掛ける大作舞台への主演が決まり、それぞれの欲望と嫉妬心が抑えられなくなっていく。
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『累』詳細ネタバレをラスト結末まで
※ここから『累』原作漫画の14巻ラストネタバレ・犯人の正体・結末を含みます。ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
起:手に入れた口紅の魔法、美しい顔を手に入れて女優に
伝説の女優としての名をほしいままにし、美しいまま死んだ淵透世。
その娘なのに、まったく似ても似つかない、醜い少女・累。その醜さゆえに、累は小学校でいつもいじめられていた。
ある日、累をいじめていた主犯の西沢イチカの企みで、累は学芸会の『シンデレラ』の主役に抜擢される。しかし、クラスメイトたちが累の演技を認め始め、焦ったイチカは突然累を主役の座から引きずり下ろし、自分がシンデレラとなってしまう。絶望した累は、
「”口紅”を使いなさい」
という母の言葉を思い出し、「その顔がほしい」と口紅を塗ってイチカにくちづけた。すると、累とイチカの顔が入れ替わった。
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イチカの顔を手に入れた累は、シンデレラとして舞台に戻る。そこで浴びた拍手と喝采。累は同時に、母の顔が母のものではなかった可能性に気付く。
累はトイレに閉じ込めていたイチカを、学校の屋上に連れてきた。いつまでも顔を返さない累に、イチカは刃物を突き付ける。だが累は逆にそのナイフをくわえてみせた。
累「このままひきさいたら、あなたに顔を返したときにあなたの口も裂けるかしら」
驚いたイチカは、誤って屋上から転落してしまう。そして、裂けたのは累の口だった。
イチカを殺してしまった累は自殺しようとするが、母親の声が聞こえてきた。醜さゆえに、父親に捨てられたのだと。
累は、一つの選択をする。醜い自分を捨て、美しい誰かになることを。
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高校生になった累は、相変わらずクラスでも部活でも一人でいじめられていた。そんな中、演劇の舞台に立つため、累は1学年上の演劇部部長・五十嵐幾と顔を交換したいと望むようになる。
かわいくて性格もいい幾は、累がとんでもない演技の才能を秘めていることに気付き、友だちになろうといってくれた。しかし累は、それを妬んだ同じ演劇部の仲間たちに、またしても追い詰められてしまう。
劇の本番当日、幾に睡眠薬を飲ませ、口紅を使って顔を奪うと主役のジョバンニとして舞台に立った。『銀河鉄道の夜』をアレンジした『祭りよ、今宵だけは哀しげに』の舞台で、累のジョバンニは満場の拍手を浴びた。
一方で、累は何時間で顔の交換が元に戻るのか、不安になっていた。舞台が終わった後、口紅を塗って幾にくちづけると、顔が入れ替わった。
顔を返した累は、幾に別れを告げる。そして美しい顔を維持し、再び舞台に立つための方法を探し始めた。
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承:丹沢ニナとの契約、狂い始めた歯車
母親の法事で、累の前に羽生田という男が現れた。
羽生田は、淵透世が他人の顔と人生を盗み取って生きるのに協力してきたという。そして、娘の累を導くよう頼まれたというのだ。
羽生田にチケットを渡され、見に行った舞台で累は丹沢ニナと出会う。ニナは圧倒的な美しさを誇りながらも、脇役に甘んじ、演技に精細を欠いていた。
舞台後、羽生田がニナを累に引き合わせた。ニナに素顔をバカにされた累は、ニナの顔を奪い、台本も見ずにセリフをそらんじてみせる。累の演技力を認めたニナは、累と協力関係を結ぶ。
実は、ニナは実家からあと2年で女優として成功できなければあきらめろと言われていた。しかし、演技ができないけれども女優を続けたいニナにとって、口紅の能力は必要なものだった。
しかしそれは表向きの理由で、ニナはある秘密を抱えていた。睡眠障害の一種で、世界でも稀な奇病、通称「眠り姫症候群」。身体は健康そのものだが、急に眠りに落ち、数週間の間目覚めない。そんな発作が数か月ごとに起こるのだ。
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ニナはこの病気で高校の入学式で倒れ、5月まで眠ってしまっていた。6月に復帰するも、発作で眠っている間に起きたことを記憶に留められず、学校で友達を作れずにいた。そして再び発作を起こし、ニナは学校をやめた。
両親が心配して連れ出した演劇ワークショップで、ニナは烏合零太と出会う。「美しい顔を武器に、忘れられない存在になればいい」と烏合零太に言われたニナは、女優を目指すようになる。
しかし成人までに完治するはずの病気を、再び発症。ニナはやっともらえた役を失ってしまう。
またいつ目が覚めるかわからないと思うと怖くて眠れなくなっていった。演技どころかセリフを覚えることにすら上手く集中できなかった。ニナが舞台で精細を欠いていたのはそのためだ。
いつ治るかもいつ眠りに落ちるかもわからない。だけど、ニナはどんな手を使ってでも”丹沢ニナ”を舞台に立たせる決心をした。たとえそれが自分自身でなくともだ。
ニナと顔を交換した累は、ニナに頼まれて烏合零太演出の舞台、チェーホフの『かもめ』でニーナ役のオーディションに挑むことになった。
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演出家として煮詰まり、変化を求めてニーナ役をオーディション公募していた烏合は、突出した執念を見せつける累の異常性に惹かれる。
そして累はオーディションに合格した。
稽古が進むにつれ、累は全力で丹沢ニナを喰い尽くそうとする。累の稽古をマネージャーと偽って見に来たニナは、烏合が累を
烏合「彼女は彼女だけの演技を持っていると感じる。その正体はまだわからないが・・・おそらく誰にも真似できないものだ」
と評するのを聞いてしまう。
烏合が見出しているのは、ニナの顔の下にいる自分だと気付いた累は、次第に烏合に恋をしていく。
一方、舞台の観客より、烏合の記憶に刻まれることを望んでいることに気付いたニナは、烏合と累のキスシーンを目撃してしまう。ニナは、累の変身の秘密が口紅にあることに気付き、累から口紅を奪い取ると烏合の元へと向かった。
翌日、烏合と一夜を過ごし、帰ってきたニナと累は大喧嘩する。協力関係を終わらせる宣言をした直後、ニーナは再び眠りに落ちてしまった。
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ニナが目覚めたのは12月。既に一か月も経っていた。
『かもめ』の舞台は大成功のうちに終了し、その後累には舞台のオファーが3件、映画の仕事まで来ていた。
そしてニナは、烏合との恋が終わったことを知らされる。実は一か月前のあの夜、自分の姿に戻り、烏合と一夜を共にしようとしたが、「容姿も仕草もいつもと変わらないのに別人のように感じる」と烏合に拒絶されていた。
いくつかの舞台をこなし、美しさも演技も磨かれ、”丹沢ニナ”が名を馳せていくほどに、ニナ本人は以前より頻繁に睡眠発作に襲われていった。
1年半が経過した頃、ニナは起きているときでもぼんやりしていることが多くなり、そしてある朝、ニナは累の代わりに台本を持ってゲネプロに立った。ニナが口にしたのは『かもめ』のセリフだ。
ニナ「私はもう、ニーナでも丹沢ニナでも、誰でもないのよ!誰の記憶の中にも存在していない!こうなったのは全部あなたのせいよ・・・かさね!!!」
たとえ元に戻っても 忘れられるより辛い屈辱が待っていることを知ったニナは、ビルの屋上から飛び降りた。
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地上に叩きつけられたニナの顔に累はキスをして顔を入れ替えるも、その後ニナは植物状態になってしまった。
病院に現れた叔母の峰世に、累は峰世が今まで自分を虐待していたこと、さらに母親が残した遺産を横領していたことを告発する遺書を書いたとウソをつき、取引を持ちかける。
遺書を公表しない代わりに、累の延命治療、そして介護のすべてを自分と羽生田に任せろと。峰世はこの提案を飲むしかなかった。
だが植物状態になったニナを前に、そしてニナの母親を欺き続けることに罪悪感を感じ始め、累は
累「はやく目を醒まして!そして私に早く・・・こんなおそろしいことやめさせて!!」
と願うようになっていた。
しかし羽生田にしばらく見ていなかった自分の顔を鏡で見せつけられ、自分が生きるための虚構を誰にも壊されないよう、誰も彼も欺いてみせる決心をする。
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相変わらず娘がニセモノではないかと疑う母親の紡美に招かれ、累は丹沢家を訪れた。
一緒に料理をしている最中、追い詰められた紡美は、「あなたはニナじゃない!!一体誰なの!?」と累に包丁を向けてしまう。
それこそが羽生田の描いたシナリオだった。
累は事前にニナの父親に、母親が「身近な人物が瓜ふたつの別人にすり替わっている」という妄想を抱く、“カプグラ症候群”という病気ではないかと相談していたのだ。
娘以外の何者でもない娘を父親に見せつけておき、母親が累への疑いを口にするまで追い詰める。そうして実際に娘に包丁を向ける妻の様子を見た父親は、妻がその病気ではないかと疑い、 紡美を拘束してしまった。
そうしてニナの母親を排除した累は、”丹沢ニナ”として舞台『サロメ』を成功させた。
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転:異母姉妹・野菊との出会い、咲朱の誕生
そんな累の前に、海道与と淵透世の娘、累の異母姉妹である野菊が現れた。
実の妹とは知らず、野菊と仲良くなっていく累。
本物の淵透世は、いざなと顔を交換するため、何年も地下室に監禁されていたのだ。
戸籍もなく、18年間ずっと屋敷に閉じ込められて育った野菊は、父親に関係を強要されることに疲れ果て、ついに父親を殴り殺してしまう。野菊はその時初めて、父親から自分に姉がいることを知らされる。
だが生きる術を持たない野菊は、身体を売って何とか暮らしていた。そんな中、客の一人として天ヶ崎と出会う。
天ヶ崎に累について調べさせた野菊は、累の秘密に辿り着く。そして自宅に行った際、鍵のかかった部屋にニナを見つけ、いざなと累を符合させた。
野菊はかつて父親と暮らしていた忌まわしき屋敷を、顔交換の手がかりを求めて訪れた。書斎に会った手帳から、いざなが口紅を唇に塗り、くちづけることで母親の顔を奪っていたことに気付く。
野菊「虚像ごときが本物に迫るなど許せない。私が・・・殺してあげる」
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野菊はニナの母親・紡美の元を訪ね、ニナの部屋の鍵を手に入れて、累の部屋へと潜入した。再びニナに接触した野菊は、恐るべき事実に気づく。
ニナは、植物状態になって1年以上、ずっと指しか動かせないが意識があったのだ。
野菊は二人で真実を明らかにしようと申し出るが、ニナはそれを「ははにしらせるな、かなしむ」と断る。そして、「おねがい。わたしをころして」とニナに願うのだった。「にせものはいらない」と。
舞台『ガラスの動物園』でローラを演じる累を見ていた野菊は気付く。ニナは母親である紡美にも誰にも、にせものに劣る自分の姿を知られたくないのだ。
ニナの思いを悟った野菊は、再び累の部屋へと向かう。そしてニナの口を枕で塞いだ。
「あなたはわるくない」と言い残し、ニナは野菊に殺された。
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部屋に戻った累は愕然とする。キスしたニナの唇が冷たかったからだ。
累はすぐに羽生田に連絡し、ニナとの入れ替わりの痕跡を消し、表向きには失踪と見せかけて姿を消した。そして地方の街に身を潜め、ほとぼりが冷めるのを待った。
累はニナのように相手を追い詰めて殺してしまうかもしれない恐怖から、口紅の力なんてもうたくさんだと羽生田を追い払う。そんな累に、羽生田は「醜いお前に生きる価値は無い」と言い放つ。
街に出た累は思い知る。口紅を使い始める以前よりずっと屈辱的で惨めな地獄 。きっと自分は死ぬまで醜く、一人暗い場所で生きるしかない。
累「私は生きる最期のその瞬間まで光の中で美しく存りたい!!!」
そして累は野菊に、希望を見出すのだった。
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ニナは自分から累に近付いていく。自分がニナを殺せば累が次に利用すべき”顔”を欲することを見越して、自身を餌に累をおびき寄せ、奈落の底に叩き落とす計画だった。
ニナの協力を得た累は、何も無い暗闇より突如咲き誇る朱の炎、“咲朱(さき)”として舞台に戻った。
淵透世の再来として華々しくデビューした咲朱の元に、富士原佳雄の舞台の依頼が舞い込む。富士原佳雄は淵透世とも何度か仕事をしている世界的な演出家だ。
しかし台本は、母の最期の役となったシェイクスピアの『マクベス』。しかもマクベス役はかつてニナの顔を奪っていた頃の恋人、雨野申彦だ。羽生田は懸念を示すが、累はこの舞台を引き受けた。
舞台の稽古が始まり、実際に人を殺して来た累は、西沢イチカやニナら自分が殺した者たちの亡霊に取り憑かれ、母親と同じ運命を辿り始めてしまう。
野菊は自らの計画を完遂するため、かつて忌むべき父親がいざなに言った言葉を累に言い、累を立ち直らせた。
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野菊は咲朱に最も注目の集まる最終日のカーテンコールで、マクベス夫人としての口紅の魔法をはぐことを狙っていた。
自分が持つ口紅と、累の口紅を入れ替え、口紅を破壊。朝にすませた”交換”から12時間後、ちょうどカーテンコールの最中に”咲朱”は”かさね”へと変貌するはずだった。
だがカーテンコールで顔は変わらなかった。客席にいた野菊に、累が禍々しく微笑む。野菊は羽生田によって眠らされ、気付いた時には地下室に閉じ込められていた。
実は、羽生田は野菊の計画に気付いていたのだ。その上で累に罠を仕掛けさせ、野菊が裏切るかどうか賭けをしていた。
自分を騙し続けて来た野菊に、累は「私ももう手段は選ばない」と宣言する。
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結:顔の永久交換なるか、累の衝撃のラスト
顔の永久交換の方法を探し始めた累と羽生田だったが、五十嵐幾の出現により、再び歯車は狂い始める。
咲朱が次に依頼された富士原佳雄の舞台は、咲朱と五十嵐幾のダブルキャストによる『星・ひとしずく』。五十嵐幾はかつて高校時代に累が顔を交換し、ジョバンニを演じた相手だ。
一方、野菊の身を案じた天ヶ崎が行動を開始し、密かに幾に接触し、累の秘密を伝えた。
羽生田は、富士原佳雄の海外公演を成功させた後、自分の舞台に出てくれないかと累に尋ねる。累はこれを了承した。
だがゲネプロの日、屋敷に羽生田一人になるのを狙って、天ヶ崎が野菊を逃した。羽生田は天ヶ崎に足を刺され、殴られて気絶してしまう。その間幾が累を足止めした。
咲朱になれなくなった累は、姿を消した。
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咲朱が女優としてその価値を高めてゆくほど苦しみに変わっていた累は、断崖から飛び降りようとする。その時、累は淵透世の最期の言葉を思い出した。
それから累は、母親の足取りを辿り始める。その終着地として、朱磐に辿り着いた累を羽生田が待っていた。
羽生田が舞台で再現したいのは、いざなが自らをかつて殺した者どもを殺し、全てを洗う炎を放って呪い続けた朱磐を滅ぼした光景だ。その話を聞いた累は、羽生田の舞台に出ることを決意する。
一方、野菊は自分の手で累を殺して終わらせるしかないと、幾と共に累の行方を追っていた。
累が東京に戻ると、富士原佳雄の事務所に野菊が咲朱として姿を現した。野菊の伝言を聞いた累は、羽生田を巻き、一人野菊と幾が待つ高校の体育館へ向かう。しかし羽生田もまた、累の裏切りに気付いていた。交渉の場に現れた羽生田は、天ヶ崎を盾に野菊を脅す。
累「私はあなたの舞台に出る・・・野菊の顔でね。けど・・・それで・・・最期にする。口紅を使うのも・・・舞台に立つのも・・・」
信じられないという野菊に、累は交換の主導権を野菊にゆずるため、口紅を差し出した。
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累は自分の最後の舞台『暁(あけ)の姫』の共演相手に、幾を指名する。だが累は、咲朱になることができなかった。
一方で累の顔を借りた幾は、その交換で醜い者の気持ちを完全に掴んでしまう。だが累はいつまで経っても咲朱になることができない。
口紅まで手放して累が何を企んでいるのか探るため、羽生田と野菊は海道与の弟・海道凪の論文を読むため、大学の研究室を訪れた。
しかし何の手がかりもなく、諦めかけていたところへ、野菊が海道凪の手帳を持っていることが判明。この手帳から、羽生田は永久交換の方法に気付く。
しかし通し稽古で幾の演じる”宵”を見た累は、役を降りてしまった。
そんな累に、羽生田は淵透世の最期を語る。いざなの死から4年後、海道与に淵透世の処分を頼まれた羽生田は、淵透世を朱磐に連れて行き、自らの手で刺し殺したのだ。
「野菊。どうか・・・生き・・・て・・・ゆるすこと・・・なく・・・恨みなさ・・・い・・・私を」
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どうしても咲朱になろうとしない累に、羽生田は野菊との顔の永久交換を強行しようとする。そんな羽生田に、累は真実を告げた。川で累を助けて死んだのは、淵透世だったと。
母が最後に言った言葉を思い出したのだ。
「かさねちゃんどうか生きて・・・そしていざなさんのこと、あなたが認てあげて」
つまり、その後3年間を野菊と過ごしたのは、いざなだった。
「あなたは自分の顔で自分の声で自分の行きたい場所へ行って、生きたいように生きるの」
そう野菊に言い続けていた女こそ、いざなだったのだ。
いざなを掃除婦として雇っていた劇場のオーナー、堺武美の元を訪れ、累の言うことが真実だと知った羽生田は、累に「殺してくれ」と頼む。累は、「母の心がわかってない」と叫ぶ。
当時、いざなが演じたかったのは美しい巫女”暁”ではなく、醜い鬼女”宵”。いざなが羽生田の台本を読み、涙し微笑んだ本当の理由は。
いざな「これは私が舞うべき物語だ」
そして累もまた、”宵”を演じたいと願うのだった。
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だが羽生田は、累がその素顔で照明の下に現れたら、それは演劇ではなく”見世物”だと断固拒否する。『暁の姫』は上映を取り止めるほかなくなった。
累は羽生田に母の遺した荷物を渡し、去った。バッグに入っていたのは海道凪あての手紙の束だった。
3か月後、累を呼び出した羽生田は、海道凪について語り始める。
羽生田がいざなと出会った11の夏。海道凪は考古学者として古代の朱顔料として伝わる”日紅”を探すため、朱磐を訪れていた。そして羽生田を橋渡しとして、”日紅”を探すいざなと海道の手紙のやり取りが始まった。
手紙のやり取りを経て、いつしか海道凪に恋をしていたいざなだったが、海道凪は槻波乃と恋人関係にあった。いざなと同じ家でいざなと同じ年に生まれ、醜いいざなが存在を消された一方で、美しい波乃は愛されて育っていた。
海道凪と波乃のキスシーンを見たいざなは、波乃を殺して顔を奪い、”口紅”の一部を海道凪に渡して姿を消した。
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数年後。淵透世の顔を手に入れたいざなは、偶然を装って海道凪に接触する。だが海道凪は、裏でいざなが顔を交換していた現場を目撃していた。
海道凪は「すべてを元の場所におさめてくる」と羽生田に告げ、いざなを伴って朱磐へと向かう。
いざなは自分を救った平坂千草の家に火を放ち、炎の中で死のうとした。だがそこへ駆け付けた羽生田によって助けられ、いざなは生き残ってしまう。一方で海道凪は、落ちてきた木材の下敷きになり、亡くなった。
累は野菊を呼び出し、ある頼み事をする。そして野菊に口紅を差し出すが、野菊は
野菊「私にとっては人から醜いとされる者も人から美しいとされる者も同じ”異形”でしか無いわ。淵透世が守ろうとしたあなたが今も望むなら、顔を永久に交換したとて私に失うものは無い」
と告げる。だが累は「私はもう望まない」と、いざなにも淵透世にも翻弄されることなく、自分たちの手でけじめをつけると宣言した。
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1年後。『暁の姫』の舞台稽古が再開された。累は素顔で、”宵”として稽古に参加する。だが初日の稽古は一言もセリフを読めず、その後も全く宵になれずにいた。そんな累に、羽生田はいざなではなく、累自身の姿を見つめ始める。
舞台初日。客席にかつての恋人、雨野の姿を捉えた累は萎縮してまともな演技ができなかった。累は意を決して雨野に声を掛けるが、残り2日は仕事で観ることはできないと告げられる。
羽生田は直前にラストシーンを追加し、”咲朱”や”ニナ”や”淵透世”の面影を追うのではなく、「これはお前の物語だ」と諭す。
3日目の舞台で、累は観客の熱狂と拍手を浴びた。羽生田は累に次の舞台をと望むが、劇場の外には野菊に連れられ、ニナの母親・丹沢紡美が来ていた。
ニナの日記を読んだ紡美は、累に包丁を向ける。そして、累は紡美に喉を裂かれて死んだ。
だがその死の直前、紡美は口紅の力で”永久交換”を成し遂げ、「淵累」を奪っていく。『宵暁の姫』の舞台で顔交換のヒントを得た紡美は、累自身を奪うという復讐に出たのだ。
累は顔から手足の指先までも、全身を丹沢紡美にすりかえられてしまった。年を経て老いた肉体と、淵累殺害の前科と、そしてその日から、世から離されて生きる孤独の日々が累の全てだった。
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『累』解説&考察
ここから『累』原作漫画の1~14巻のネタバレを元に、考察・解説していきます。
累とニナの顔交換の秘密、口紅のルール
・口紅のちからは顔のみを入れ替える。体は自分のまま。
・変身の持続時間は平均約12時間。
・新たな相手にキスをすると、前の相手との顔の交換はキャンセルされる。
・相手が死んでから口紅で顔を交換できるのはせいぜい5日程度。一回の持続時間がだんだん減っていく。
・一度目のキスで一旦顔を戻し、もう一度キスし直すことで顔が再び交換され、効果が12時間更新される。
・朱磐の地の伝説を伝える”神楽”の中に織り込まれたヒントから、いざなは山頂の池に隠されていた、くちづけで人の顔を奪う“日紅”という鉱物顔料を見つけた。
・口紅の成分は、粉末のうち60%は未知の鉱物、残りの40%は複数の人間の血液。
・顔を交換する両者の血液を日紅に含ませ使うことで、永久交換は成立する。
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累の母親・誘の過去と朱磐
朱磐(あけいわ)という寂しい山村に生まれたいざなは、”丙午の年に醜い子が生まれたら殺せ”という時代にそぐわぬ因習によって、生まれてすぐ殺されかけた。
そこを助産婦だった平坂千草に匿われ、禁足の聖地”白永山”で、隠されたまま育つ。
母親は心中と見せかけて火の中で死んだ。
いざなは育ての親以外の人間とは会うこともできず、社会からまったく隔離され、10代を山奥の小屋に籠もって過ごした。
海道凪との手紙のやり取りからヒントを得て、口紅の力を手に入れたいざなは、同じ村に住む槻波乃という美少女の顔を奪い、自らを生まれてはならないとした者たちを殺し、火を放って村を出た。
殺されたのは14人。朱磐事件と呼ばれたが、当然犯人は捕まっていない。
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街へ出たいざなだったが、顔を奪う機会に恵まれず、野垂れ死に仕掛けていたところで、淵透世に出会う。いざなは淵透世の家に居候しながら、劇場の掃除婦として働くことになり、機会を伺っていた。
熱を出した淵透世の代わりに舞台に立ったいざなは、元々衣装作りがしたく、演技が苦手だった淵透世との協力関係を手に入れる。
顔を交換し始めて4年が経ったある日、俊英の演出家、海道与が現れた。舞台を見た海道は淵透世に一瞬で魅了され、淵透世引き抜こうとする。この話を聞いた淵透世は、役者をやめるつもりで劇場を訪れるが、海道に引き止められ、思い留まった。
そして再びいざなとの顔の交換をし、女優・淵透世は海道与のプロデュース公演で、「かもめ」のニーナを演じ、実力派女優として一躍注目を浴びた。その後海道は上演のたびに淵透世を起用。
いつしか愛を育み、二人は結婚した。だがそれこそが最大のあやまちであり、崩壊のはじまりだった。
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結婚から数ヶ月して、いざなは累を身籠った。醜い子どもが生まれたことをきっかけに、結婚生活は破綻する。淵透世の身辺を調べ始めた海道は、美しい妻の秘密を目撃。顔交換の事実を知り、いざなと累を追い出してしまう。
ずっと海道が好きだった淵透世は、いざなの代わりに海道の妻となった。しかし演技のできない淵透世に壊れ始めた海道は、淵透世は地下室に監禁し、再びいざなを呼び戻した。
淵透世の裏切りと海道の自分への態度により、醜い己とこの生きる価値は美しさを奪わずしてありえないのだと思い知る。
一方、淵透世は野菊を出産するも、野菊は海道によって取り上げられ、地下室に監禁され続けた。
そしていざなはついに、12時間という制約をふり切り、相手の顔を永久に奪い取る“顔の永久交換”に辿り着く。その方法を突き止めたいざなは、頼みがあると羽生田に会いに来た。
いざな「それによって私はいざなを殺し本物の”淵透世”に成るつもりだ」
羽生田はその時点で永久的な顔の交換を済ませているのではと思っていたが、事実は違っていた。
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いざな「娘を奈落の底から白い証明の下へ導いて・・・!」
それがいざなの最後の願いだった。
いざなは屋敷にこもる海道を外に出し、そのすきに顔の永久交換を済ませ、累と共に逃げるつもりだった。だが海道がいざなの家を訪れたことで計画が狂った。
海道はいざなが累を連れて逃げようとしていることを見抜き、累を人質にいざなに自分の元へ戻るよう脅す。いざなが「戻る」と言うと、累を橋から濁流へと突き落とした。累を追っていざなも飛び降りた。
そしていざなは川へと消えた。
しかし、実はこの時川で累を助けたのが本物の淵透世で、野菊と3年一緒に暮らしていたのはいざなだったことが、累の記憶から判明する。
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羽生田の過去
既に妻子ある朱砂野(すさの)という男が、妻ではない女に手を出し、孕ませ生まれたのが羽生田だった。
母親はどうしても愛せない羽生田を、11の時朱磐に住む父の元へ置いて姿を消した。
当然朱砂野の家で歓迎されるはずもなく、そこで羽生田はいざなと出会う。
海道凪を巻き込んで死なせ、死にたがっていたいざなを助け出して以後、いざなの奴隷として、いざなを支え続けた。
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『累』感想
原作のピークはレディ・マクベス。
マクベス夫人を終えた後はひたすら、累が罪と向き合う時間でした。
ニナを殺した時は己の罪をも踏み越えようとした累が、結局は罪の意識に踏み潰されるラストがもう・・・。
主人公が報いを受けるラストは十分想定できたのですが、
『デスノート』のライトといい、『コードギアス』のルルーシュといい、「悪は滅びなければならない」という倫理的ラストは個人的には望んでいなかったので、辛かったです・・・。
しかも謎を謎として放置したままのラストのため、かなりモヤモヤが残りました。
まず「実は累を助けたのは本物の淵透世だった」という展開。
淵透世は自分の子供の野菊を連れて逃げ出すのでは??海道与の留守を狙うならむしろ、4人で一緒に逃げるのがベストでしょう。
そしていくらかつては仲の良い友人だったとはいえ、散々自分の顔を奪って何年も地下に監禁してきた女の子供を命を張って助けるか?と。
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さらに哀れ過ぎるのが羽生田です。
顔の永久交換をほのめかした時点で4人で海道与の元から逃げることを計画していたなら、一体いざなは羽生田を何だと思っているのか。
いざなの全てをまかない、その娘を導き、あまつさえ海道与にいざなの遺体を始末させられる。
利用されるだけ利用し続けられる羽生田がただただ辛い・・・。
海道凪が出てくるまではいざなに十分共感の余地はあったんですが、彼の出現により容姿が醜い女は内面もクソ醜かったという落ちに終始し、累に口紅遺してる時点で淵透世の顔を奪って生きてきた罪の意識は皆無じゃないかと。
いざなが海道凪をあれだけ愛していたというのなら、あっさりとその兄・海道与に惹かれ、子まで成してしまうのはあまりにも・・・。
美しい顔が欲しかったのは女優として生きるためではなく、結局は「恋愛したかったから」というのは、何人もの人を殺しておいてあまりにもえげつない目的です・・・。
あと結局いざなに見えた平坂千草の亡霊や、累に見えたいざな、野菊に見えた淵透世は何だったのか????
映画はキャスティングがもう残念でならないですね~~~。
烏合零太が横山裕って・・・。
そして芳根京子ちゃんも十二分に可愛いじゃん・・・!!!
どう考えても容姿で悩んだことがないであろう彼女たちが、累の執念や妬みを表現できるとは思えないんだぜ・・・。